遺品整理士が考えるエンディングノートを書くメリットと活用法ガイド
『終活』という言葉が一般的となった今、エンディングノートはとくに50代・60代のこれからの人生には欠かさないものとなってきました。
実際に終活を考えるタイミングは人それぞれですが、たとえば定年退職を迎えた時や、病気になった時などが多いようです。
そんな中、このエンディングノートは自分はもちろんのこと、これから残される家族のための大切な情報整理の手段ともいえます。
このノートは個人の希望や思いを記すことで、自分自身の人生の締めくくりをより豊かにし、残された家族や友人たちが遺族としてどのように行動すればよいかを明確にする役割も持っています。
この記事では、わたしたち遺品整理士の立場からエンディングノートの基本的な目的や書くメリットについて触れ、その重要性について深く理解できるよう解説します。
書き始める前の準備や、記入すべき項目の整理方法、さらには具体的な書き方のポイントまで、初心者でもわかりやすく進めるための情報が詰まっています。
また、完成したノートの取り扱いや家族との共有方法についても触れ、読者が実際に活用できる具体的な方法を提案しています。
このガイドを通じて、自分自身や周囲の人々にどのような影響を与えることができるのかを考えながら、自分の思いをしっかりと伝える方法を学んでいただけると嬉しいです。
エンディングノートとは?
エンディングノートは、自分の人生の最期に向けての準備や思いをまとめたノートのことを指します。
市販でもたくさんの種類のエンディングノートを見かける機会も多くなってきたかと思います。
近年、終活に対する意識が高まっている中で、エンディングノートの重要性が認識されるようになりました。
残された自分の時間をいかに過ごすか、そして自分の大切な家族たちにどのようなメッセージを残し、自分が亡くなった後にどうして欲しいのか。
このノートを通じて、自分の希望や想いを具体的に示すことで、残された家族や親しい人々が自分に関する大切な情報をしっかりと理解し、思いを汲み取る手助けをすることができます。
エンディングノートの目的
エンディングノートを書く目的はたくさんありますが、主な目的として「自分の意思を伝える」ことが最優先に挙げられます。
例えば、自身の葬儀や供養の希望、財産管理など、さまざまな事項を事前に整理し、家族に負担をかけることなく伝えられるのです。
また、病気や事故によって自分の意思が表明できない状況になった際にも、事前に書き留めておくことで、自身の気持ちが反映された選択をしてもらえる可能性が高まります。
エンディングノートは、残された人たちへのメッセージとも言えます。
こうした意思を伝えているかどうか、そしてそれをきちんとした形で残しているかどうかによって、遺族の負担を抑えることができます。
終活を始める人たちの中には「家族に迷惑をかけたくない」という方も多く、また遺族側からしても「もっと生前のうちにいろいろと決めて欲しかった」という意見も多々あります。
そうした方たちの溝を少しでも埋め、お互いが心残りなくお別れが出来るようにするための手段がエンディングノートなのです。
エンディングノートを書くメリット
エンディングノートを書くことには、大きく3つのメリットがあります。
・心の整理ができる
自分の人生や思い出、未来に対する考えをノートに書き出すことで、心の中に抱える不安やストレスを軽減し、穏やかな気持ちで日々を過ごすことができます。
エンディングノートとはある意味、自叙伝のような役割も兼ねています。
その中でこれからの人生、やりたい事やしてみたい事を見出していき、老後の時間を有意義かつ楽しく過ごす事ができます。
・家族への負担を減らす
誰かが亡くなった後、葬儀や相続の手続きなど、家族や親しい人が行わなければならない事は非常に多いです。
こうした負担を少しでも減らすには故人の希望をより細かく・正確に知っていることが特に重要です。
エンディングノートを書くことで、自分の希望や思いを伝え、一つ一つの決定をスムーズに進めてもらう手助けとなります。
・自己理解が深まる
エンディングノートを書くことによって自分のこれまでの人生を振り返り、自身の価値観や大切にしていることについて考える機会が増えます。
これにより自分が本当に大切にしたいものや、これから何をしたいかのヒントを得ることができ、より充実した日々を送ることができます。
たとえば「自分は今、どれくらいの資産を持っているだろう?」と考えた時、それを一度見直し、書き留める事で家族のために残しておきたいもの・自分自身のために使いたいものと分けていき、そこから「じゃあこのお金を使って〇〇へ旅行しよう」や「残りの人生を豊かにするために家をリフォームしよう」と自分のための希望が膨らんでいきます。
そうしたきっかけを作るために、エンディングノートを書くことはとても重要です。
エンディングノートは、単なる終わりのための準備ではありません。
自分自身のこれまでの人生をより深く理解し、これからの人生を豊かに生きるためのツールでもあるのです。
是非、エンディングノートの作成にチャレンジしてみてください。
あなたの特別な想いが込められたノートは、きっと大切な人々にとっても助けとなるはずです。
書き始める前に知っておくべきこと
では実際にエンディングノートを書こうと思い立った時、「何を準備すればいいの?」や「具体的にはどんなことを書けばいいの?」と疑問に思う方もたくさんいらっしゃると思います。
エンディングノートを書く前に、いくつかの準備が必要です。
ここでは、書き始める前に知っておくべき大切なポイントを見ていきましょう。
ノートの選び方は?
エンディングノートはたくさんの種類があります。
それぞれサイズが違ったり、デザインが異なったり、書いている項目が違うなどさまざまです。
エンディングノートを選ぶときは、自分が書きやすいと思ったものや好みに合ったものを選ぶことが大切です。
まずはデザイン、シンプルなものからイラストが多めのものまでさまざまですので、自分が書きたい気持ちが高まるデザインを選択するといいですね。
そして持ち運びやすい小さいサイズや、書きやすい大きめのサイズから選んで、自分にフィットするものを見つけましょう。
そして最後に、ページのレイアウトも確認しましょう。
ノートによっては質問形式で進んで行き項目が細々してたくさんあるものや、自分の意見をたくさん書くことが出来る自由度の高いものなど、それぞれかなり違いがあります。
自分にとって書きやすいと思うものや、好みに合わせて選びましょう。
もちろん、市販で売っているノートだけに囚われず、パソコンが得意な人はパソコンを使って入力をしてみたり、思い切って真っ新なノートからオリジナルのエンディングノートを書くのも素敵です。
ノート選びの段階から楽しみながら、自分にぴったりの一冊を見つけてください。
用意するものは?
エンディングノートを書くために必要なものはそこまで多くなく、意外とシンプルです。
・ノートやパソコンなどの媒体
まずはエンディングノートが必要になります。
前述のとおり、市販のエンディングノートを購入するのも良いですが、パソコンやスマートフォン・電子パッドで作成する方法もあります。
その場合は自分にとって書きやすく・尚且つしっかりと保存できるアプリを選ぶことが重要になります。
もしも入力した内容がきちんと保存できるか、そして家族に伝えられるかが心配の場合にはデバイスに簡易的に入力したあとにノートに書き写すこともおすすめです。
・書くための時間や空間
エンディングノートには生年月日や血液型などの基本情報などの他に、自分の考えや夢を記入する項目もあります。
ゆっくりと考え、書き示すためには、自分にとって最も有意義に使える時間と空間を用意する必要があります。
緊張を解すためにリラックスが出来る飲み物やお菓子を用意するのも良いですし、心地よい空間を整えるために静かな場所やお気に入りの椅子などを準備するなどもおすすめです。
自分にとって書きやすい環境を整えてください。
・その他、項目に応じて必要なもの
エンディングノートは現時点において自身の資産がどれくらいあるのかや、今自分が加入している保険、契約している会社や物を書いておく項目があります。
これは本人が亡くなった後、残された家族や親しい人が本人に代わって解約手続きや相続の手続きをする時に必要な情報になります。
そうしたこともわかりやすく伝えるために、各項目において必要な書類をあらかじめ準備しておきましょう。
どこから書けばいいの?
エンディングノートには非常に多くのことを書くことができますが、最初から全てを書こうとすると思った以上に書くことが多すぎて挫折してしまったという意見も多く聞きます。
必ずすべての項目を埋めなければいけないという必要もありませんが、後から自分で何度も読み返す時や、残された家族のためにはなるべく分かりやすく、具体的に書いておくべきです。
まずは内容を確認し、それに関する情報を整理することが大切です。
「よし書くぞ」と意気込む前に、まずは手元にあるノートをぱらぱらと捲り、どんな項目があるのかを確認してみてください。
そして「これならすぐに埋められる」と思った項目には鉛筆などの修正できるツールを使ってメモ書きをしていきます。
たとえば、どのエンディングノートでも基本情報を書く事から始まることが多いです。
氏名、生年月日、連絡先など、スラスラと書けるところから書いていきましょう。
またエンディングノートには財産や貴重品を記載する項目もあります。
これも後々修正できるよう、自分が覚えている限りでよいので鉛筆書きでざっくりとリストアップしていきましよう。
現時点で通帳にはいくらある、マンションや一軒家を持っている、〇〇の会社の株を持っている、ブランドの時計を持っているなど、具体的な数や正確な数字はわからなくても構いません。
次に、家族や友人に向けたメッセージ、思い出など、人に伝えたいことを思いつくまま書いてみてください。
きちんとした文章ではなくても、伝えたい言葉やしてあげたい事を思い浮かんだタイミングでササッと記入しましょう。
ある程度書き留めた段階で、改めて文章を構成し、大切な人に向けたメッセージを作成します。
また、もしも自分の希望する葬儀の形や供養の方法があるなら、事前に考えて書き留める事が重要です。
すでに生前契約している葬儀場があれば具体的にどこのどんなプランなのかを書いておけば、遺族はいざという時にそれに基づいて行動することができます。
エンディングノートは自身の夢や目標を思い返しながら、箇条書きでざっくりと書き、ある程度項目を埋めていったあとで具体的にまとめていくと良いでしょう。
こうした流れで記入することで、ノートを書くことが簡単に感じられるようになります。
エンディングノートの主な項目は?
それでは具体的にエンディングノートはどのようなことを書けばよいのでしょうか?
基本情報・財産や貴重品の管理・パスワードやID・自分の思い出・家族にして欲しいこと・自分がしたいことがエンディングノートで書かなければいけない項目です。
ここではより詳しく書いておくべき情報や内容を説明していきます。
基本情報の記入
エンディングノートの一番最初のステップは、自分に関する基本情報の記入です。
自分の氏名、生年月日、住所、連絡先などの個人的な情報をまとめることから始まります。
残された家族や親しい人が、自分が万が一の際にスムーズに手続きを進めるために必要です。
また医療関係者や葬儀社との連絡が必要になった際に正確な情報を記入することで混乱を避けることができるため、自分にとっては基本的な情報ですが、非常に重要で役に立つ情報でもあります。
財産や大切な物の整理
自分の資産がどれくらいあるか、そしてその資産をどうしたいのかを記入する項目もあります。
現時点で自分が所有する不動産(一軒家・土地・マンションなど)、現金や預貯金・株式などの金融資産、車、貴金属や時計などの貴重品など、思いつく範囲で具体的にリストアップしましょう。
また家族が大切にしている思い出の品や、特に伝えたい価値のある物も忘れずに記載することが大切です。
実際にリストアップをしていく中で、自分の財産をどう分けたいかを考える良い機会にもなります。
たとえば「自分の時計は子どもに引き継いでほしい」や、「車は親しい人に引き渡す約束をしている」など、思い入れのある品物に対する具体的な希望を明確にすることで、残される家族はそれに基づいて行動することができます。
とくに遺産相続はトラブルになりやすいところなので、「だれになにをどうしてほしいか」を明確に分かりやすく記載しましょう。
パスワードやIDなどの記載
近年、私たちの生活において『パスワード・ID』を発行・管理することが多くなってきました。
インターネットを通じてこのパスワード・IDを使用し、さまざまなサービスを利用する機会が増えた現在では、こうした故人のデジタルデータに関するトラブルも増加傾向にあります。
ネットサービスの中には有料のコンテンツもあり、買い物をする、動画を見るなどのサービスを解約する際、このパスワードとIDが必要不可欠です。
そのためエンディングノートには、自分が利用しているサービスのアカウント情報やパスワードも記入しておきましょう。
これにより家族は残されたデータにアクセスしやすくなり、必要な手続きをスムーズに行いやすくなります。
ただし、この情報は悪用のおそれもあるため、かならず適切に保護し、必要以上の人に見られないように配慮が必要です。
メッセージや思い出の記録
エンディングノートでは、自分の思いを伝えるためのメッセージや思い出の記録も重要な項目です。
家族や友人への感謝の気持ち、自分の人生で大切にしてきた出来事、思い出深いエピソードなどを書き留めることは、遺された人々にとっても心の支えとなります。
この部分はあまり形式に囚われず、自分らしい言葉で自由に表現すると良いでしょう。
将来、ノートを自分が読み返した時、または残された家族や親しい人がそれを手にして読んだとき、思い出が鮮明に蘇るような温かい内容にしたいですね。
自分が希望する葬儀や供養の方法
エンディングノートでは、もしも自分が希望する葬儀や供養の方法があれば、それをわかりやすく具体的に明記しておくことが重要です。
自分の葬儀に関する具体的な希望(家族葬、一般葬、一日葬など)や、特に選びたい宗教的な儀式、埋葬や散骨の場所、参列してほしい人のリストなどを記載します。
近年では葬儀の種類も増え、また海洋散骨や宇宙葬などの遺骨の扱いについても選ぶものが増えてきました。
自分の考えや理想にあった最期を見送って貰うために、「こういう葬儀にしてほしい」や、もっと想像しやすいところでいえば「自分の葬儀にはこの音楽をかけて見送って欲しい」などのちょっとした希望でも書いてみるとよいでしょう。
「どのような形で送り出してほしいか」という思いを具体的に残すことで、残された家族の負担を軽減できます。
また、思いをすっきりと伝えることは、自分自身の気持ちの整理にも繋がります。
今自分がしたいこと・夢
家族や大切や人への伝えるべきことをすべて記入し終わったら、今度は自分のためにエンディングノートを書いていきましょう。
あとは自分が今したいことや夢についてを考える時間になります。
定年後や人生の後半に実現したい旅行、挑戦したい趣味、目指している目標などを書き込むことで、自分の意志を再確認し、残りの人生をどう充実させていきたいかを考えるきっかけにもなります。
エンディングノートは、単なる残された人のための最期の準備だけではありません。
これからの人生を悔いを残さず、生き生きと過ごしていくために必要な自分のためのノートなのです。
その他、状況に応じて書くべき項目
今現状で例えばペットを飼っている方や、すでに有料老人ホームなどの契約を自身で済ませている場合には、念のため明記しておく必要があります。
エンディングノートの種類によっては細かい内容を記載する項目もありますが、中には項目自体が無い場合もありますので、記入漏れがないか注意が必要です。
・ペットを飼っている場合
自身が病気やケガで入院する、または介護施設に入居する、亡くなったなどの場合、飼っているペットをどうするかを考える必要があります。
家族や友人に引き取ってもらう約束や、自分が希望するまたは生前契約している保護団体などがあれば、連絡先やどういった契約の内容になっているのかを分かりやすく記載しましょう。
・老人ホームなどの契約をしている場合
事前に希望している老人ホームや介護施設がある・契約している場合には、必ずどことどういった契約をしているのかを記載しましょう。
また念のため、契約書やパンフレットなどを保管しておき、エンディングノートに保管場所を書き示しておくとよいです。
・持病などがある場合
意思の疎通ができなくなってしまった際、かかりつけの病院や毎日飲んでいる薬などを記入するようにしましょう。
万が一の場合、ノートを確認した人がすぐに対処ができるように医師名などの具体的な内容をわかりやすく書くとスムーズに対応ができます。
上記以外にも臓器提供の意思を書く項目などもあります。
わかりやすく言えば、生前に自分がだれとどんな約束事をしているかを明記し、万が一の際にエンディングノートを託された人がどんな行動をとればいいのかを書くことが大事なのです。
実際に書いてみよう
それでは実際に手元にあるエンディングノートを書いていきましょう。
エンディングノートをざっくりと書く際にはただ内容を埋めるだけも大丈夫ですが、最終的に手直しを繰り返していき、読む人へ自分の考えや意思を正確に伝えることが大切です。
せっかくの大切なメッセージを後世に残すために、書き方のポイントを押さえましょう。
まずはざっくりノートを確認しよう
書き始める前に、まずはノートを全体的にざっくりと確認し、どんな項目があるのかを事前に知る必要があります。
目次や各項目がどういう内容になっているかを把握しておくことで、どの部分を重点的に埋めていけば良いのかの方向性が見えてきます。
例えば基本情報や財産整理、葬儀の希望など、各項目の重要性や優先度に応じて、どれから始めるべきか考えると良いでしょう。
もちろん決まった順番はないので、自分が「これなら埋められる」と思った項目から書き進めていくのが一番埋めやすい方法かもしれません。
また見開きページや項目ごとの構成を確認することで、自分の頭の中で整理するべきことや書き進める際のイメージを掴むことができます。
そうすることで、後で「何を書けばいいんだろう」と悩む時間を減らし、スムーズに記入を進めることができるのです。
書く時間と場所を決めよう
エンディングノートを書くための時間と場所を選ぶことも重要なポイントです。
時間や表現方法が制限されているものではないからこそ、ゆっくりと自分自身の考えを思い浮かばせることができる空間が理想的です。
まずは自分にとってリラックスできる空間を選びましょう。
騒がしいところや人の出入りが多い場所は避け、静かで集中できる場所を確保することが推奨されますが、一番は自分にとって居心地が良く、言葉をすらすらと思い浮かぶことが出来る場所です。
お気に入りのカフェや施設でも良いですし、自分の家の中で自分らしく作業のできる場所を見つけるのも良いです。
それから、書く時間も意識して選びましょう。
自分が最もリラックスし、集中できる時間帯(例えば、朝のひとときや、午後の静かな時間)を見つけておくことで、より良い内容を引き出すことができるのです。
心が落ち着いている時に書くことで、自分の思いやメッセージがより柔軟かつ鮮明に表現されます。
また計画性がある方が書きやすいなら、1日のなかでエンディングノートを書く時間を具体的に決めるのも効果的です。
その時間は必ず自分の考えをゆっくりと思い浮かべる時間と決めることで、エンディングノートを書く事が生活の一部なるため、よりスムーズに書き進められるようになります。
初心者のための記入テクニック
実際にエンディングノートを記入する際のテクニックとしては、まずはきちんとした文章ではなくていいので、自由に書き進めることが大切です。
そして自分が埋められると思った項目からどんどんと書き進んで行くことも大事です。
最初から完璧に書こうとすると、「何をどう書けばいいんだろう?」と躓いてしまうことも多く、時間ばかりが取られてしまいます。
まずは思いついたことを鉛筆を使ってどんどん書き出していき、後で手直しをするための材料を揃えていきましょう。
特に自分が考えや思い出をつづる部分では、自分の気持ちを素直に表現することが重要です。
エンディングノートとは書いている時は自分のためのノートなのですから、最初から言葉を丁寧にする必要も、取り繕う必要もないのです。
ある程度書き出しが終われば、次に具体的な例やエピソードを盛り込み、後に読む人たちにとっても理解しやすいと思える文章に手直しをします。
またカテゴリごとに色ペンなどを使い分けることで視覚的にも分かりやすく整理したり、イラストやシールなどを使って自分らしくアレンジするのもとても素敵です。
このように自由に書くことを心掛けることによって、自然体で自分自身を表現することができます。
エンディングノートを書くことは、自分自身の人生を振り返る貴重な時間でもあります。
そしてどういったノートづくりが良いという正解はありません。
誰かに伝えたい思いを形にし、そのノートが自身の伝えたいメッセージとして輝くようになれば、良い記入ができたと言えるでしょう。
完成後の取り扱いと保管方法
エンディングノートを書き終わったら、その後の取り扱いや保管方法も非常に重要です。
先程紹介したとおり、項目の中には個人情報や資産・IDやパスワードなどの悪用のおそれがある重要な情報も多数あります。
そのためにも自分が長い時間を費やして丁寧に作成した内容を、家族や親しい人にしっかりと伝え、また安全に保管することが求められます。
それでは具体的な方法について見ていきましょう。
エンディングノートの共有方法
エンディングノートはあくまで自分の考えや希望を記したものですが、そのノートの内容には大切な家族や親しい人にも知っておいてもらいたいものやメッセージもたくさんあります。
まず、意思の疎通が難しくなってしまった時・入院などのタイミング・亡くなった後などに必ず目に通して貰えるよう、エンディングノートの存在を知っておいてもらう必要があります。
そしてノートに書かれている内容にはどんな時にどう役立つのかをざっくりと説明することが重要です。
例えば、普段の会話の中でさりげなくエンディングノートの存在に言及し、書いた経緯や意図を伝えてみてください。
もし目を通してくれるかどうかが不安な場合には、書き終わったエンディングノートを事前に見せておきましょう。
信頼できる人に実物を見せ、その内容について話し合うことで、たとえばノートの形状やデザインを覚えておいてもらったり、自分がエンディングノートを書いた意図により深い理解を促すことができます。
また一緒に内容を見直すことで、自分がエンディングノートを託したい人の意見や感想を聞く良い機会にもなるでしょう。
たとえば相続について家族の意見や、葬儀に関する遺族側の希望などを聞くきっかけになり、より残された大切なひとのためのノートとしての意味合いを強く感じる事のできるものになります。
保管場所の決め方と管理方法
エンディングノートは自分の生前のうちだけではなく、残された大切な人の手元にきちんと届くように、長く大切に保管しておくべきものです。
では最も適した保管場所とはどのような場所でしょうか?
自分にとって覚えやすくいつでも手に取りやすい場所や、通帳や保険証券などの他の重要書類がまとめられている場所が良いでしょう。
例えば、引き出しの中や書類整理用のフォルダー、金庫が特におすすめです。
そしてもしもの際に託された人がノートを見つけやすいように、保管場所は変えずに1つの場所にのみ絞って保管しましょう。
日によってバラバラの場所に置いたり、伝えておいた場所と違うところに保管しておくと、紛失のトラブルが発生する可能性があります。
保管方法に関しても注意が必要です。
紙のノートの場合、湿気や直射日光から守るために、封筒やボックスに入れて保管するのがおすすめです。
また、擦れたり経年劣化で文字が消えたりなどが無いよう、記入に使用する筆記用具にも注意が必要です。
パソコンやスマートフォンのアプリなど、デジタルで作成したエンディングノートは、かならずパスワードを設定して安全なクラウドストレージやUSBメモリに保存することをおすすめします。
そしてどのクラウドストレージやメモリを使用しているか・アクセスするためのパスワードは何かを必ず記憶し、伝えておくようにしましょう。
どちらの場合も、後で見返すときやもしもの際に残された人たちが困らないよう、すぐに見つけられる場所に保管することが大切です。
エンディングノートの活用法
エンディングノートは完成した後も自分自身のために活用することができます。
すべて書き終えた後でも、定期的に見直し、自分の考えに変化があったときにその都度更新することをお勧めします。
特に大きなライフイベントや健康の変化などがあった場合、その内容を新たに書き加えることで、より現実的で役立つノートとなります。
また、エンディングノートを通じて生まれるコミュニケーションの機会も大切にしてください。
家族に自分の希望や思いを伝えることは絆を深めるきっかけにもなり、また家族の気持ちや思いを再確認し、より自分自身の人生を豊かにすることができます。
誕生日や記念日など、特別な日に見直してみるのも良いでしょう。
エンディングノートを作成することで、人生の整理ができ、自分の目標や夢、願望を再確認する良い機会になります。
新たな夢や計画を思いついた際にも、エンディングノートに書き込んで、自分の成長を記録することができるのです。
ぜひ、エンディングノートを活用して、より充実した人生を送る手助けにしてみてください。
おわりに
エンディングノートについてお話を進めてきましたが、最後に遺品整理士として、経験上におけるノートの重要性や意味を改めて考えてみましょう。
わたしたち遺品整理士は残されたお子さん、ご兄弟、またはご友人などから依頼を受け、亡くなった方のご遺品を片付けたり、仕分けたりする作業をお手伝いします。
ご依頼者の中には、「もっとこうしておいてほしかった」と故人に対する思いを吐露する方も多くいらっしゃいます。
たとえば生前のうちにもっと部屋を片付けてほしかった、遺産がどれくらいあるのかを明記してほしかった、自分の死後に誰にどんな約束をしていたのかをちゃんと伝えてほしかった等、そのすべてはエンディングノートをしっかりと書いておくことで解決できたことばかりです。
遺言書の場所ひとつにとっても、遺族にきちんと伝わっていなかったばかりに、ありとあらゆる家具をひっくり返すほどに大変なことになります。
大切な人を思いやるのであれば、少しでもその負担を解消してあげるために、ノートはしっかりと記載し託しておくべきだと、遺品整理士としては常に思います。
そしてエンディングノートはなにも家族や親しい人だけのためのものではありません。
自分自身がどのように人生を歩んできたのか、またこれからの人生において何を大切にしたいのかを再確認するための大切な手段です。
たとえば自分の預貯金や資産がどれくらいあるのか、それをどれくらい家族に遺しておきたいかを考えます。
そして大切な人の事を考え終えた後に、あとの残りの資産と時間を自分のために使うことができるのです。
もちろん考え方は逆でも構いません、「海外に旅行に行ってみたい」や「今までやったことがない習い事をしてみたい」と思いついた時、そこから逆算して大切な人へ遺す物を決めるのも良いです。
そう考えると、エンディングノートを書いていくうちに、自分の中でどんどんと楽しみが増えていくのではないでしょうか。
多くの人が人生の終わりを考えることは避けがちですが、エンディングノートはその考えに向き合う手助けをし、心の整理をするきっかけを与えてくれます。
最後に、エンディングノートを書き始めることは、一種の贈り物のようなものと考えてみてはいかがでしょうか。
未来の自分への贈り物であり、同時に大切な人への贈り物でもあるのです。
そのために自分の気持ちを素直に書いてみたり、大切な家族や友人へのメッセージを今思いつく限り、どんな言葉でも良いので自分自身の出来る限りの表現で書いてください。
これまでご紹介した内容を参考に、ぜひ自分だけのエンディングノートを作成してみてください。
最初は少し難しいかもしれませんが、一歩一歩進めていくことで、より深く自分自身を知ることができるでしょう。
エンディングノートは、あなた自身を見つめ直し、人生を豊かにする素晴らしい旅の出発点です。
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