深刻な『ゴミ屋敷問題』、その原因や解決策は?
現代社会において深刻な問題となっている『ゴミ屋敷』。
言葉だけを聞くと単に大量のゴミが溜まった家というイメージですが、その危険性や地域に与える影響は大きいです。
いつ自分がその被害を受けるか、または自分の家がゴミ屋敷になってしまうのか、この記事ではゴミ屋敷の危険性・発生する原因・そして効果的な解決策について詳しく解説します。
ゴミ屋敷とは?
家の中や周囲に大量のゴミや不要な物が放置され、通常の生活が困難な状態にある状態の部屋・住宅のことを指します。
一般的には住人が長期間にわたってゴミを処理せず、家の中がゴミであふれかえり、正常な生活環境が維持できなくなっている状態を示します。
ゴミの種類は様々ありますが、主に食料品などの生ごみやペットボトル・空き缶、その他日用雑貨品が乱雑し床が見えなくなる、また人の膝丈ほどまで積み上がっている状態がほとんどです。
わたしたち清掃業者の経験上、ゴミ屋敷には次のような特徴が多く見られました。
-
-
大量のゴミが家や庭に溜まっている
家の中や周囲にゴミが放置され、歩く場所が限られたり、家の中に入れないほどになることがあります。 -
悪臭や害虫の発生
ゴミの中には生ゴミや腐敗した食品が含まれている場合があり、これが悪臭を引き起こし、ゴキブリやネズミなどの害虫が発生しやすくなります。 -
必要以上の日用品が散乱している
たとえばなぜか一人暮らしなのに爪切りが3つ以上もある、大量に割り箸やお惣菜によくある小分けの醤油があるなど、日常生活において必要以上の日用品が部屋のあちこちに見られるケースがあります。 -
社会的孤立の兆候がある
ゴミ屋敷の住人は、社会的に孤立していることが多く、近隣住民とのトラブルや人間関係の問題を抱えている場合があります。
-
上記のような状態の時は、主に近隣住民や不動産の管理会社・または自治体などからのクレームよって発覚するケースが多いです。
ゴミ屋敷となってしまう原因
先述したとおり、私たち清掃業者が依頼を受けるタイミングは「近隣住民や不動産の管理会社・または自治体などからのクレームがきた」または「退去時に清掃を行うように大家から指示があった」などの出来事がきっかけになることが多いです。
不思議なことにゴミ屋敷に住む方は気付かない・またはそういった状態に至るまでに自覚がないという場合がほとんどで、そうなってしまう主な原因としては以下の点が挙げられます。
1. 精神的・心理的なもの
ゴミ屋敷に住む人の中には「もともと綺麗好きで部屋がきれいだった」や「片付けが好きだった」という人も多くいます。
仕事や人間関係などの悩みがきっかけで心理的な不安を抱えてしまい、次第に得意だった掃除や片付けが出来なくなり、気づけばゴミ屋敷の状態だったというケースも。
また、うつ病の症状の中にはやる気や動機の喪失・決断力の低下などがあり、こうした状態ではゴミを捨てることができず、溜め込んでしまう傾向があります。
精神的に疲弊していると、生活環境を整える気力が湧かず、ゴミの処理が後回しにされることもあり、ゴミ屋敷の状態に陥りやすいのです。
2.経済的なもの
ゴミを処分したり、片付けや掃除をする時、意図しない時にお金がかかる場合もあります。
経済的に余裕がないがために片付けやゴミ処理に費やすことが出来ない、また業者に依頼する費用が捻出できない場合などは、ますます家の中にゴミが溜まってしまうことがあります。
大型の不用品や家に溜まった大量のゴミを処理しようとするときにはやはりコストがかかるものです。
こうした経済的な困難が精神的なストレスを引き起こし、問題をさらに悪化させることもあります。
3.社会的な孤立によるもの
現代社会においては、高齢化や核家族化、独居生活の増加に伴い、社会的に孤立してしまう人が増えています。このような人々は、家族や友人、地域コミュニティとの関わりが少なくなり、誰も片付けを促したり手助けをしてくれる人がいないため、ゴミが溜まっていくことがあります。また、孤立しているため、外部からの介入を拒む傾向も見られます。
4. 物への執着からくるもの
「いつか使うかもしれない」、「いつか役に立つかもしれない」というもったいないという気持ちから物を捨てられないという精神的な問題もひとつの要因です。
とくに高齢の方に傾向が強く見られますが、過去の思い出や将来的に必要になるかもしれないという思いから、不要なものを捨てられないことが多いです。
また将来への不安などから物を捨てずに過剰に保持してしまうことに繋がる場合もあり、たとえばコンビニで貰う割りばしやおしぼりなどといった細々とした日用品から、大きい物では冷蔵庫や洗濯機などのもう使わなくなった古い家電製品までさまざまです。
この結果、ゴミや不要品が家の中に蓄積していき、ゴミ屋敷化が進行してしまいます。
ゴミ屋敷がもたらす危険性とは?
ゴミ屋敷は単にそこに住む人だけの問題ではありません。
その危険性は近隣住民やその物件のオーナー、さらに地域全体まで影響が及ぶ場合があります。
健康面におけるリスク
ゴミが長期間におよび大量に放置されると衛生状態が悪化し、ゴキブリやネズミなどの害虫が発生し、住人だけでなく近隣住民の健康にも悪影響を及ぼす可能性があります。
また感染症のリスクが高まり、とくにアレルギーや呼吸器疾患を抱える人々にとっては深刻な健康被害が懸念されます。
火災のリスク
燃えやすい紙や布、プラスチック製品が混在している空間は火災のリスクが高まる状態です。
大量のゴミが家の中に溜まると小さな火種でも燃え広がる可能性は高く、また普段から床が塞がっていたりゴミが積まれているような動線が悪い状況では避難経路が塞がれたり、消火活動が遅れることで被害が拡大する危険性も考えられます。
こうした火事による被害は近隣家屋への延焼被害も予想されます。
近隣住民やオーナーへのリスク
ゴミ屋敷は単に個人の問題に留まらず、その近隣に住む人たちや、賃貸であればその部屋を貸しているオーナーへの影響も考えられます。
とくに悪臭などは換気扇や排水溝などから流れ、集合住宅全体にまで被害が及ぶ可能性があります。
一度壁紙やフローリングに染みついた臭いなどは簡単には取れず、クロスの張替などの内装工事が必要となる場合もあり、その修繕費用は被害が大きければ大きいほど高額になっていきます。
また悪臭や害虫の発生などは集合住宅や近隣の不動産全体に悪影響を及ぼし、「部屋が埋まらない」や「売り地がなかなか成約しない」などの金銭的な被害も発生します。
ゴミ屋敷問題への解決策はあるのか?
ゴミ屋敷が社会に及ぼす影響は多く、社会問題になるほどに深刻化しています。
経済的な問題・精神的な問題・個人的な問題が複雑に絡んでいるこの問題は一筋縄では解決できません。
しかし適切な対応と支援を行うことで、解決の糸口を見つけることができるはずです。
ここではいくつかの具体的な解決策について紹介します。
解決策その①:専門業者を利用する
一番有効的で早く解決する手段は、ゴミ屋敷の専門業者に作業を任せることです。
非常にスピーディーかつ的確にゴミを処分することができるため、住人の負担を大幅に軽減します。
また業者によっては整理整頓に関する様々な知識や、適切な処分についての案内を丁寧に教えてくれる業者もいます。
そうした専門業者に依頼し、すっきりした生活環境に一度整え直すことで、日常的な片付けや掃除に意欲を感じられるようになります。
解決策その②: 精神的なケアをおこなう
専門業者を呼ぶだけでは根本的な解決に結びつかないこともあります。
それはストレスや悩みを抱える中で精神的に疲弊し、生活環境を整える気力が湧かず、結果ゴミ屋敷となってしまったという場合。
心のケアも行っていくことで問題にアプローチし、再びゴミが溜まることがないよう清潔な環境で健康的な生活が送れるように心がけることが重要です。
解決策その③:地域でのサポートをおこなう
1人暮らしの高齢者などはとくに地域全体の協力が必要です。
近隣住民や自治体が連携し、問題が深刻化する前に住人と常にコミュニケーションを取ることにより、問題の早期解決につながります。
また、過疎地域などの孤立している人々に対して支援を提供することでゴミ屋敷の問題だけでなく、孤独死などを防ぐことにも効果があります。
解決策その④:最終的には法的な対応を
何度も通告しているにもかかわらず解決しない・ゴミなどによる被害が近隣に及んでいるなど、最悪の場合には法的手段を講じることも考えられます。
自治体は被害を訴えられた場合、そのゴミ屋敷の住人に対して行政指導を行ったり、強制的に清掃を行う権限を行使することがあります。
法律に基づいた措置を取ることで問題解決を図るケースも少なくありませんが、住人との対立を生む可能性もあるため、慎重な対応が求められます。
ゴミ屋敷にさせないために、常に心がけよう
一度ゴミ屋敷となってしまった部屋を自分自身の手で解決するには長い時間がかかり、そしてその分精神的かつ身体的な負担がかかってしまいます。
無理をせず、すぐに悩みを解決する手段として、ゴミ屋敷の専門業者に相談し、頼ってみてください。
そこから少しずつ部屋を清潔にし、より自分にとって健康的な生活を送れる環境に整えていくことが大事です。
わたしたちもゴミ屋敷となってしまった方たちに、「掃除して終わり」ではなく、常日頃から出来る事をコツコツとやっていく事で綺麗な部屋を保つ工夫や予防策を提案しています。
たとえば「新しい物を買ったら、古い物を何かひとつ捨てる」や、「使い捨てのカトラリー類は必要以上に持ち帰らない」など、それぞれの人の性格や悩みにあわせたアドバイスをわたしたちなりに考え、一緒に悩み、解決の糸口を探していきます。
「きれい好きな自分には関係ない」と思っている方でも、いつ自分がそのリスクを抱えてしまうかはわかりません。
ゴミ屋敷という社会問題は、家族や友人、専門業者、地域社会のサポートを組み合わせて、住人が健康的な生活を取り戻すための支援を行うことが大切です。
前の記事へ
« 問題化する『空き家』、大分県の現状と対策は?