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問題化する『空き家』、大分県の現状と対策は?

遺品整理に赴くのが困難な遠方の集落

 

日本全体で人口減少や高齢化が進む中、地方各地で「空き家問題」が深刻化しています。

大分県も例外ではなく、多くの地域で空き家が増加しており、地域の活性化や安全性、景観への悪影響が懸念されています。

 

空き家は単に住む人がいなくなった家というだけでなく、管理不足による老朽化、治安の悪化、そして地域コミュニティの崩壊を引き起こす要因となり得ます。

大分県における空き家問題の現状を分析し、その原因や影響、さらに解決策について考察します。

 

 

大分県における空き家の現状

 

令和5年10月1日を調査期日として実施された「令和5年住宅・土地統計調査」について、令和6年9月頃に住宅及び世帯に関する基本結果が総務省統計局より公表されました。

 

まず全国の総住宅数と総世帯数、そのうちの空き家数が以下の通りです。

 

【2023年住宅・土地統計調査】

総住宅数(戸) 総世帯数(世帯) 空き家戸数(戸)
65,047,000 56,215,000 9,002,000

 

全国的な空き家戸数の割合は約9,002,000戸と過去最多、総住宅数に占める空き家率も13.8%と過去最高の結果となっています。

 

それでは大分県のみの集計結果はどうでしょうか。

 

【2023年住宅・土地統計調査】

総住宅数(戸) 総世帯数(世帯) 空き家戸数(戸)
603,300 493,442 115,500戸

※総世帯数のみ、令和5年2月1日現在の統計

 

大分県は空き家率が19.1%と、実は九州でも2番目に高い割合になります。

また全国的には6番目に空き家率が多いなど、空き家問題は大分県にとってかなり大きく重要な課題だということが統計結果によってわかります。

 

 

空き家が増加する要因とは?

 

大分県は自然があり、豊かな食文化や歴史ある城跡など、魅力的な県です。

また「おんせん県」としての温泉地で知られ、特に別府や湯布院の温泉は国内外で人気です。

 

しかし一方で都市部への人口集中と高齢化が進む中、特に郊外や山間部、過疎地で空き家が増加しています。

先述の通り総務省の統計によると、2023年時点で大分県内の空き家率は全国平均よりも高い水準にあります。

 

ではなぜ空き家が増加するのでしょうか?

 

 

(1) 人口減少と高齢化

大分県の人口は過去数十年間にわたって減少傾向にありますが、その要因として若者が進学や就職のために都市部へ移住し、地元に戻るケースが少ないことなどがあげられます。

事実、令和4年10月1日から令和5年9月30日における大分県全体の転入出数は転入が40,792、転出が40,426とやや変化の見られない数字となりますが、実際の人口増減については-10,066と減少傾向が強くみられます。

 

特に農村部では高齢者が亡くなった後、子どもたちが家を相続しても住むことなくそのまま放置されるケースが多くみられ、こうした事態が空き家の増加を促進させる要因となっています。

 

 

(2) 管理や維持に関する負担

とくに高齢者が単身で住んでいた家に多く見られますが、定期的な清掃や修繕を十分に行う事が出来ず、その家を相続した時には老朽化が進んでおり、修繕のための費用や維持管理費が高額になってしまい、結果として空き家のまま放置されるというケースも多くあります。

当然固定資産税などの維持費はかかりますが、いざ手放したいと考えていても空き家の状態などにより買い手が見つからないという悪循環に陥り、問題を深刻化させてしまうのです。

 

 

(3) 不動産市場の停滞

家や土地を売却する際に重要なのは「不動産の価値」です。

都市部と比べて地方の不動産市場は停滞しており、空き家を売却しようとしても買い手が見つかりにくい状況があります。

とくに大分県内の過疎化が進んでいる地域では、住む人が少ないため需要が少なく、不動産としての価値が低くなっていることが多いです。

「空き家を手放したい」と考えていても売却までにかかる管理費や維持費、修繕費などと売却価格を相対的に考えた時、金額の折り合いがつかないと手放すこと自体を諦め、空き家のままで放置してしまうケースも多く見られます。

 

 

なぜ空き家はダメなのか?懸念される問題

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空き家の問題はその持ち主だけの問題ではありません。

増加することによって引き起こされる問題や、空き家そのものが地域に与える影響は多岐にわたります。

 

    • 防災・防犯上のリスク

  • 空き家が放置されることで建物の老朽化が進み、地震や台風などの自然災害時に倒壊する危険性が高まります。
  • また放置された家は不審者や犯罪者の隠れ家となるリスクもあり、地域の安全性が損なわれる可能性があります。
    •  
    • 地域の景観の悪化

  • 空き家は外観が傷んだり、雑草が生い茂ったりすることが多く、地域全体の景観を損ないます。
  • これにより住民の生活環境が悪化し、さらには観光客や移住希望者に対する地域の魅力が低下してしまうという悪循環が生まれます。
    •  
    • 不動産価値の下落

  • 老朽化の進んだ空き家による不動産の価値が下がってしまうのは、なにもその対象の物件だけではありません。
  • その周辺の不動産に対する市場価格まで下げてしまう可能性があります。

 

    • 自治体の財政の圧迫

  • 空き家が放置されると老朽化が進み、倒壊の危険性や治安の悪化につながるため、自治体は安全確保のために空き家の調査や維持管理を行う必要があります。
  • これに伴う費用が自治体の負担となりますが、空き家が増加すればするだけ、当然その分の財政は圧迫します。
    また空き家増加によって不動産価値が下がり、固定資産税収入が減少することにより、とくに過疎地域では自治体の税収がさらに減り、財政が厳しくなることも懸念されます。

 

 

大分県における空き家問題への対応策

 

大分県内や各市町村の自治体では、こうした空き家問題を解決するためにさまざまな取り組みを行っています。

こうした取り組みを知っておくことで、今現在において「家をどうしよう」と考えている場合にもスムーズに対処ができます。

 

 

 空き家バンクの活用

大分県内ではいくつかの自治体が「空き家バンク」という制度を導入しています。

空き家バンクとは所有者が売却や賃貸を希望する空き家を登録し、移住希望者や購入希望者に情報を提供する仕組みです。

これにより地域に住みたいと考える人々と、空き家を持つ所有者とのマッチングを促進しています。

この制度を活用することで、過疎地でも空き家が有効に利用されるケースが増えており、地域活性化にもつながる可能性があります。

また自治体によっては移住者支援とあわせて活用することによりスムーズに空き家を解消する仕組みを作り、空き家問題の解決に取り組んでいます。

 

 

「古民家カフェ」や「民泊」による再活用

最近では築年数の古い家屋を解体するのではなくリノベーションや改築を行い、カフェやゲストハウス、共同作業スペースなどとして再活用する事例も増えています。

いわゆる「古民家カフェ」や「民泊」などに活用することにより、観光資源として活用し地域経済を活性化させる狙いがあります。

特に観光地である別府市や湯布院などでは古民家を改装して宿泊施設や飲食店にするケースも多く、成功事例も多数あります。

 

 

移住者支援のための補助金制度

空き家の活用を促進するために補助金制度を設けている自治体もあります。

たとえば空き家を修繕する際の費用を一部負担する制度や、空き家を新築住宅に建て替える際の補助金など。

また県外・市外移住希望者には引越し費用やリフォーム・残置物撤去にかかる費用の一部を負担してくれる制度などもあり、空き家問題の解決だけではなく転入者を誘致しやすい制度により地域活性化を目指す狙いもあります。

 

 

民間団体による活動や取り組み

空き家問題に取り組んでいるのは各自治体だけではありません。

地域のNPOや住民組織が中心となって空き家の調査や管理を行い、地域全体での問題解決を目指すケースもあります。

不動産業や建設業・生活関連サービス業など、さまざまな業態がこの空き家問題に重点を置き、各々の目線と知識で課題へのアプローチを行っています。

 

 

深刻化する『空き家問題』、問題解決は一人ひとりから

 

大分県内では深刻化する空き家問題に対し、移住者支援や空き家活用のための事業者誘致など、現状でもさまざまな取り組みを行っています。

しかしこうした問題は自治体だけに任せるだけでは根本的解決にはなりません。

大事なことは一人ひとりが空き家が増える事に関する問題点を認知し、早期解決を目指すことが重要となります。

 

空き家を放置することは自治体や近隣住民にとってだけではなく、その空き家を所有している人にとっても非常にハイリスクです。

もしも火災がおこったら、台風や地震による災害で空き家が崩壊し近隣住民に被害が及んでしまったら。

 

そうなる前に自治体の取り組みを理解し、補助金などの制度を活用しながら、問題解決へ取り組んでいきましょう。

 

 

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