リチウムイオン電池の正しい捨て方とリサイクル方法
リチウムイオン電池(小型充電式電池)は現代において最も身近で、多くの電子機器に欠かせない存在です。
ゲーム機器やモバイルバッテリー、タブレット端末、その他充電式の小型家電まで多岐にわたって使用されている部品がこのリチウムイオン電池。
お手軽で便利に使えるものというイメージが強いですが、取り扱い方法や処分方法を間違えると思わぬ事故に繋がる危険性があります。
最近では夏に出番の多いハンディファン(携帯型扇風機)やワイヤレスイヤホンに使用されているリチウムイオン電池が発火などの事故を起こした問題がニュースなどで取り上げられていました。
たとえば今後、「モバイルバッテリーを使わなくなったから」や、「ワイヤレスイヤホンが壊れたから捨てたい」となった時、その適切な処分方法を理解し、実践することは非常に重要です。
リチウムイオン電池が環境に与える影響や、その危険性について解説し、具体的な捨て方やリサイクル方法を紹介します。
大分県内での電池の廃棄方法について詳しく説明し、地域のルールや収集場所の情報を提供しますので、お住まいの地域ごとに確認してみてください。
また、日常生活で心がけるべき注意点についても触れ、使わなくなったリチウムイオン電池の一時的な保管方法など、安全に利用するスキルを養えます。
この記事を通じて、リチウムイオン電池の正しい扱い方を確認し、より環境に配慮したライフスタイルを実現しましょう。
皆さんの手助けとなる情報が満載ですので、ぜひご一読ください。
リチウムイオン電池の基礎知識
つい最近よく耳にする「リチウムイオン電池」はとても身近で、ここ数年において増産されている小型の家電製品の革新に欠かせない存在です。
開発は2019年にノーベル化学賞を受賞した日本の吉野彰博士であり、このリチウムイオン電池の発明により家電の小型化やモバイル化は革新的なものになりました。
リチウムイオン電池とは
リチウムイオン電池は、充電可能な電池の一種であり、エネルギーを効率的に蓄えて利用することができます。
この技術は1990年代初頭に商業化され、以降急速に普及しました。
リチウムイオン電池の主な利点は大きく4つあります。
・小型かつ軽量
・大量の電力を蓄えることができる
・バッテリーの寿命が長い
・急速充電が可能
この利点が活用され、主に携帯電話やパソコンなどの個人向けの用途で普及し、現代ではあらゆる家電製品にリチウムイオン電池が使用されるようになりました。
使われている主な製品
リチウムイオン電池は、さまざまな製品で使用されています。
最も一般的な用途は、スマートフォンやタブレットなどの携帯電子機器です。
それ以外にも、主に身近でよく見られるリチウムイオン電池を使用した製品は以下のとおりです。
・携帯電話
・ノートパソコン
・デジタルカメラ
・モバイルバッテリー
・ワイヤレスイヤホン
・ゲーム機器
・電動工具(充電式)
・充電式の小型家電(ハンディファン・加熱式タバコなど)
・電動アシスト自転車
・電気自動車
・ドローン
携帯電話などの小さい物から電気自動車まで、幅広い用途で使用されています。
いずれも電力の供給が必要な物にもかかわらず、乾電池やボタン電池などを入れずにコードレスで使うことができる物が対象になります。
リチウムイオン電池は利便性と性能を兼ね備えた電源として重宝されています。
最近では電気自動車(EV)にもリチウムイオン電池が採用されており、環境にやさしい運転を可能にしています。
この他にも、家庭用の蓄電池システムや再生可能エネルギーの貯蔵に使用されることも増えてきました。
リチウムイオン電池は、今後のエネルギー革命の一翼を担う重要な技術と言えるでしょう。
リチウムイオン電池の危険性
リチウムイオン電池は現代において生活を豊かにするためには欠かせない存在ですが、その利便性の裏には様々な危険性も潜んでいます。
取り扱い方法や処分の仕方を間違えると、思わぬ事故に繋がる可能性があります。
リチウムイオン電池が環境に与える影響と、火災や爆発のリスクについて詳しく見ていきます。
環境への影響
リチウムイオン電池は、カーボン排出を削減するための重要な手段として多くの分野で利用されていますが、その製造や廃棄の過程で環境に悪影響を及ぼすことがあります。
電池の生産には、リチウム、コバルト、ニッケルなどの貴重な金属を採掘する必要があります。
これらの金属は通常、鉱山からの採掘によって入手され、その過程で周辺環境への影響が不可避です。
特に、リチウムは水資源に大きな影響を与えることがあり、採掘地域の地下水が減少したり、汚染されるケースが報告されています。
さらに、使用済みのリチウムイオン電池が不適切に廃棄されると重金属が土壌や水に浸透し、環境汚染を引き起こす可能性があります。
これらの物質は生態系に深刻な影響を与え、特に水生生物への悪影響が指摘されています。
したがって、環境への影響を最小限に抑えるためには、リチウムイオン電池のリサイクルや正しい廃棄方法が重要です。
火災や爆発のリスク
リチウムイオン電池は、過充電、漏電、物理的損傷、温度などが原因で発火や爆発するリスクがあります。
特に、劣化した電池や衝撃を受けた電池では、内部での化学反応が促進され、発熱しやすくなります。
近年ではリチウムイオン電池が使用されるデバイスの増加に伴い、火災事故も増加しています。
例えば、スマートフォンのバッテリーが過熱して発火する事件や、電動自転車のバッテリーが爆発するケースが報告されています。
こうした事故を防ぐためには、リチウムイオン電池の管理が非常に重要です。
例えば、長時間充電したまま放置しないことや、過度な高温や低温にさらさないことが基本的な注意事項です。
また、劣化したバッテリーは速やかに処分し、再利用やリサイクルを行うことが望ましいでしょう。
大分県内ではリチウムイオン電池専用の回収場所が設けられており、正しい廃棄方法を学ぶ機会が提供されています。
実際に起きた事故や火災
それでは実際に大分県内で起きたリチウムイオン電池による事故を見てみます。
【事例①】
2017年4月 モバイルバッテリーの焼損・火災事故 大分県にてリチウムイオン電池を使用した製品から異音が発生し、当該製品及び周辺を焼損する火災が発生。 バッテリーパックのセルに金属片の混入や電極板の不良などの不具合が生じたことが原因。 この製品は事故発生前にリコールが実施されていた。 |
【事例②】
2024年6月 リチウムイオン電池が混入による発火事故 |
大分県内に限らずリチウムイオン電池が原因による火災は多く、令和5年中に発生した製品火災の調査結果によると、製品火災182件のうち62件がバッテリー及びバッテリーを含めた電気用品によるものでした。
出火時のバッテリーの状況をみると、「充電中」に最も多く発生していますが、製品を使用していない・充電をしていない場合にも注意が必要です。
リチウムイオン電池を使用した製品はまずメーカーのリコールが出ていないかを随時確認し、情報が発表された際には速やかにメーカーの指示に合わせた取り扱い(無償修理・交換・返金・回収など)を行うことが大切です。
リコール情報などは消費者庁が発表している『リコール情報サイト』で確認できます。
(『消費者庁:リコール情報サイト』https://www.recall.caa.go.jp/)
また近年多くみられるリチウムイオン電池の事故には、産業廃棄物処理場や自治体が管理しているリサイクルセンターなどで一般家庭から回収してきたゴミに混入し発火・火災になるケースも増えています。
これらの事故を防ぐためには、製品を使用する立場において正しい捨て方を知っておくべき必要があります。
リチウムイオン電池の正しい捨て方
リチウムイオン電池による発火事故や環境汚染を防ぐには、正しく捨てることが大切です。
不適切な廃棄は環境に悪影響を及ぼす可能性があり、さらには事故を引き起こす要因にもなります。
そのため、リチウムイオン電池の正しい捨て方を理解し、実行することが求められます。
地域の廃棄物ルールを確認
リチウムイオン電池の廃棄処理は地域によって異なります。
まずは、居住地の市区町村のホームページや地域の環境センターで、廃棄物に関するルールを確認しましょう。
日本では、リチウムイオン電池は「特定家庭用機器再資源化法」に基づき、適切に捨てる必要があります。
また、地域によっては家庭ごみとは別に回収される場合もあります。
たとえば大分市ではリチウムイオン電池は通常のボタン電池や乾電池とは異なり、リチウムイオン電池を使用したバッテリーは通常収集による回収はできません。
不燃物として小型家電自体の回収はできるものの、その際にはリチウムイオン電池を使用したバッテリーは必ず取り除くようにとあります。
現在は処分場でのリチウムイオン電池原因による発火事故が多発しているため、充電式の小型家電についてはそれぞれの自治体ホームページや年に1度発行されるゴミカレンダーなどで取り扱いについては別途記載がされている場合が多くあります。
リチウムイオン電池の指定場所
大分県内では前述したとおり、小型家電に内蔵されたリチウムイオン電池使用のバッテリーは回収による処分はできません。
その代わりに各施設にてバッテリーの回収ボックスや家電量販店による無料引き取りサービスを行っています。
大分市では本庁・支所等の公共施設14カ所に回収ボックスを設置しているため、開庁時間内にボックスに入れるだけで無償で処分することが可能です。
- 市役所本庁舎(1階)
- 鶴崎支所
- 大南支所
- 稙田支所
- 大在支所
- 坂ノ市支所
- 佐賀関支所
- 野津原支所
- 明野支所
- 本神崎連絡所
- 大分東部公民館
- 大分西部公民館
- 大分南部公民館
- 南大分公民館
また、リチウムイオン電池などの小型充電式電池の回収・リサイクルは、電池メーカー・電池使用機器メーカー等の参加によって設立された「一般社団法人JBRC」の協力店舗が回収ボックスを設置しています。
詳しい設置場所や協力店については一般社団法人JBRCホームページ(https://www.jbrc.com/)にて確認しましょう。
ただし、車や電動自転車のバッテリーについては回収不可の場合もあるため、注意が必要です。
このような施設を活用することで、手軽にリチウムイオン電池を正しく捨てられ、環境保護や事故を防ぐことができます。
なぜリチウムイオン電池をリサイクルするの?
リチウムイオン電池をこのような形で回収する理由は、処分方法を誤ると発火の危険性があることも重要ですが、リサイクルが可能な資源が含有していることも理由としてあります。
リチウムイオン電池を使用した小型家電や、バッテリー本体にも、リチウム・コバルト・ニッケル・グラファイトなどの「希少金属(レアメタル)」が使用されており、それらを使用済み家電を分解・回収することによってリサイクルが可能となります。
ここでは、リサイクルにおける基本的なステップとして、リサイクルマークの確認とリチウムのリサイクル方法について詳しく説明します。
リサイクルマークの確認
リサイクルマークは、製品がリサイクル可能であることを示すマーク(スリーアローマーク)です。
リサイクルできる小型充電式電池にはかならず表記されています。
ただし1993年6月に施工された「資源有効利用促進法」より前に製造されたものには、リサイクルマークの無いものもあるため、その限りではありません。
日本のリチウムイオン電池にはこのような固有のリサイクルマークがあり、製品の使用後に正しい方法で廃棄されることを促しています。
電池の外装に見えるこのマークは、消費者が持っている製品が適切な方法で回収、再利用されることを保証するものです。
リサイクルマークが付いているリチウムイオン電池の製品は、前述した方法(指定回収場所への持ち込み)で収集したのち、適切な方法でリサイクルされます。
マークがあってもリサイクルできないもの
マークが表記されていても、通常通りの処分方法やリサイクルができないものもあります。
- メーカー不明品
- 電池種類が不明瞭(ニカド電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池のいずれかの記載がない)
- 破損、水濡れや膨張等の異常がある
- 外装なしのラミネートタイプの電池ではない
- 一般社団法人JBRCの非会員企業製のもの
自分が処分したいと考えている製品がこれらに当てはまるかどうかを確認してから、リサイクル回収ボックスを利用しましょう。
とくにメーカー不明のもの(国外製品など)や膨張などの異常がみられる状態の場合には危険なため、適切な処分が必要です。
リチウムのリサイクル方法とは?
指定回収場所に集められたリチウムイオン電池は、専門のリサイクル施設に運ばれ、分解処理されます。
リチウム、コバルト、ニッケルなどのレアメタルは化学的な方法で取り出され、再利用可能な状態にされます。
この分解の過程では有害な化学物質を含む電池を適切に処理することで、土壌や水質の汚染を防ぐことができます。
そして、抽出されたリチウムは、再び新しい電池の製造に利用されるなど、持続可能な循環が実現されます。
またリチウムイオン電池からリサイクルされたリチウムは、電気自動車や再生可能エネルギーの蓄電システムなどに再利用され、クリーンエネルギー社会の形成に貢献していきます。
これらの情報を元に、リチウムイオン電池を正しくリサイクルする方法を理解し、実践することが大切です。
リサイクルを通じて、私たちの環境を守る一翼を担うことができるのです。
処分や保管の注意点
非常に便利なリチウムイオン電池ですが、処分時はもちろん保管や使用にも注意が必要です。
取り扱いによっては火災や爆発などの事故が起こりますが、適切な方法で使用をすれば防ぐことができます。
この項目では処分時や保管・使用の際に気を付けるべきポイントをお伝えします。
使わなくなったリチウムイオン電池の保管方法
壊れてしまったバッテリーや使わなくなった小型家電をすぐに処分できない時、自宅で保管をしなければなりません。
充電をしていないから・スイッチを切っているからといって安心はできません。
使わなくなったリチウムイオン電池は、次の点に注意して保管しましょう。
-
温度や湿度に気を付ける
リチウムイオン電池は温度変化や湿度に弱いため、45℃以上または-20℃以下の場所や結露が起こりやすい場所は避けましょう。
ストーブ付近や夏場の車内においてのバッテリーの温度上昇による発火事故もあるため、熱源の近くや直射日光が当たる場所も危険です。
-
水濡れの可能性がある場所は避ける
リチウムイオン電池が使用されたバッテリーは水没などによって水にぬれた場合、破裂、発火の原因になります。
リチウムは水分子との反応性が高いため、使用しているバッテリー内のリチウム化合物の分解を引き起こし、その結果水素ガスが発生する仕組みです。
火災の可能性はもちろん、破裂・爆発の可能性もあるため、厳重な注意が必要です。
-
高所などの不安定な場所に保管しない
バッテリーは落下時など、強い衝撃を受けた際、電池内部が破損し漏電や発火・爆発の危険性が高まります。
各メーカーではリチウムイオン電池などを使用した充電式バッテリーに関しては落下等の衝撃があった際には使用せずに速やかに処分するようにと説明があるとおり、非常に危険です。
そのため被害が起きないよう、高所など落下の可能性の高い場所には保管しないように気を付けましょう。
-
金属端子をテープなどで絶縁する
処分予定のリチウムイオン電池使用バッテリーを保管する際、バッテリー内の電力を供給する金属部分(端子・電極)に他の金属が触れないようにする必要があります。
過去にはむき出しのままだった端子部分に金属製のヘアピンが触れ、火災に繋がった事故もあります。
自宅にあるセロハンテープやガムテープなどを使用し、絶縁しましょう。
リチウムイオン電池の使用は日常的に注意が必要!
各自治体や国民生活センターでも大々的な注意喚起を行っている程、リチウムイオン電池や充電器は使用に際して注意が必要なアイテムです。
処分するときや保管をするときだけでなく、日常生活においても「あれ?」と思った時には使用を止めるようにとあります。
実際にどのような時に気を付けたり、使用を中止するべきかを国民生活センターホームページ内で公表しています。
・充電端子が熱くなったり、異臭がするなど異常を感じた場合はただちに使用を中止してください。 ・リチウムイオン電池に膨張がみられた場合はすみやかに処分してください。 ・製造・販売元や型式が明示されていない商品は使用・購入をやめましょう。 ・リチウムイオン電池を搭載した機器は充電中や使用中に高温になるため、そのような場合は放熱を妨げないようにしましょう。 |
参照:https://www.kokusen.go.jp/news/data/n-20210318_1.html
(リチウムイオン電池及び充電器の使用に関する注意:独立行政法人国民生活センター)
まとめ
リチウムイオン電池は現代の豊かな生活には欠かさないもので、家電の小型化やエコ化には必要不可欠です。
しかし取り扱い方法を間違えると、思わぬ事故につながります。
近年ではリチウムイオン電池を使用した家電の小型化(ハンディファンやワイヤレスイヤホンなど)が原因による火災事故から、結果ごみ処理施設が数時間から数日間使用停止になるなどの二次被害が発生した等のニュースを度々聞くようになり、年々件数は増えています。
そのような事故が起きる背景には、「リチウムイオン電池などを使用した家電製品の捨て方がわからなかった」や、「そもそも製品にリチウムイオン電池が使用されてるとは知らなかった」などの認識不足が問題とされています。
日頃から自分たちが日々使用している物がどのようなもので出来ているのか、そして使わなくなったものを捨てるにはどうすればいいのかを考えることにより、こういった事故を防ぎ、わたしたちも安全に便利な物を使用することができます。
こうした認識を広めるため、各自治体のホームページには様々な製品の処分方法を記載しているほか、リチウムイオン電池を使用したバッテリーの処分方法を注意喚起とともに紹介しています。
「どうやって捨てればいいの?」と思った時には、ぜひお住まいの自治体ホームページを確認してみてください。
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